別にこれからもいい作品はいっぱい見つかるだろうけど、「自分が創作する時一番ぴったりくる指標とか目標」みたいな枠で言うと、ちょっとグルグル以上って今後出会えないのかも。

悪い意味じゃないんだけど、やっぱ狂四郎2030とか聖剣の刀鍛冶とか花散峪山人考みたいなのは素晴らしい名作と思っても、読んでてツライはツライんだよな。少なくとも、日常的に何度も何度も読み返すってのはちょっと私には出来るものじゃない。グルグルは本当にいくらでも読み返せる。自分にとって、ストレスってもんがない。そして作り方はかなり手が込んでるけど、伝えたい事がシンプルで柔らかいから、グルグルそのものは作れなくても、作る時空気とか感覚の手真似みたいな事は出来るというか。っていうかそこそこ良く出来たり、ダメダメでも一応完成出来たものの陰にはいつもグルグルがあったような気がする。

なんとなく創作しながら感じていた、「本格的なハイファンタジーはダメだけど、シンプルなメルヘンにすると自分にしては上手くいく」ってのもやっぱグルグルがどこかにあったと思うというか……。グルグル自体は多分裏設定は細かい作品だと思うんだけどね。衛藤先生は色々決めるの嫌いって言うけど、多分作品やキャラクターの根幹にかかわる点は、アドリブ系作家でもガチガチに固まってるタイプだと思う。その場でまだ決まっていない事が多かったり、設定資料とかガチガチに作るタイプじゃなくても。舞勇伝キタキタとかみたいに、そういうの良くも悪くもわざとぶっ壊してるっぽい著作もあるとは思うが。

狂四郎とか花散みたいなのは、読むのはまだいいけど作る時、それそのものを作るんじゃなくて、感覚として真似ようとするだけでもやっぱり辛い。っていうか作ってる本人らも辛かった作品だろうし。狂四郎なんか、あんなちょっとの後書きの文量でもそれがわかるような作品だし。伝えたい事の為に必要だからやってるだけだし。

衛藤先生はグルグル終わっても創作ずっとすると思うけど、衛藤先生もコレ以上ってかなり高い壁だと思うしな……。衛藤先生も多分、無印終わった時「グルグルの人」で留まりたくない葛藤って絶対あったと思うんだよな。ただ、あまりにも初期作(初連載ではないらしいけど)でいきなり、ニケとククリ、あの優しい世界、そして一番話題にされるギャグ、何もかも作家(というより衛藤先生はやりたい事的に芸術家って言った方がしっくりくるけど)の一つの最高峰として完成され過ぎてしまったっていうか……。

グルグルって衛藤先生のサグラダ・ファミリアっていうか……。いやアレと違って作者がいる間には終わるっていうか、そろそろ2も終わりは見えてると思うけど。多分そういう部分ある代表作に、色々複雑な気持ちとかは裏にあったとは思うけど。グルグルを描くのが嫌ではなくても、他の創作もやっぱりしたいって部分はあるんだろうな、音楽活動やってらっしゃるってのもそういう事だろうし。でもグルグル2以降、原稿落としたり休載したりってほぼないんでしょ?いつ寝てるんだあの人……。やっぱ陽キャ過ぎて狂気な人だ……。

っていうかまだあるんか?って話だが、私が秒でくっついてるようなカップル作りがちなのも、やっぱグルグルみたいなカップルを上っ面だけ真似ちゃってたんだと思うな……。(これは好んで読んでたイチャラブラノベ群の影響もデカいだろうが)。何にしてもああいう鉄板カップルものは、他に何かしらストーリー描けないと厳しいって言うのにね……。

しかし20年もかけてグルグルの神髄に触れた今でも、「もっとわかりやすくしてくれよ……!」って気持ちがあるな。今の担当編集さん、本当に衛藤先生と魂が合うんだろうね。グルグルの伝わらない描き方って、やっぱ普通の編集さんならストップ描けちゃうと思うんだ。その作家さんに一読者として惚れているほど。

最低でも、差別そのものは描かなくても、無印の一つの節目のアラハビカ編くらいは、「魔物と人間の間に対立、壁がある」って、説明くらいは入れさせると思うんだ。多分それすらも衛藤先生はしたくなかったんだと思うけど……。ずっと暗闇に閉じ込められていたククリちゃんに向けた、楽しい冒険世界でありたいから。

衛藤先生ってすごく優しい人だとは思うけど、すごく強情な人でもあると思う……こんな人が、舞勇伝キタキタで一度、自分のやりたい事を捨て散らかしてしまったのか不思議だよ……。

一応あの人の著作にも明確ないじめとかの描写がある作品自体はあって、それが「がじぇっと」なんだけど、アレもまあ、直接のシーンってほっとんどなかったし、本気で悪意描くの苦手な人だよね……。「がじぇっと」のイジメ描写も、これが話の根幹になっているから渋々入れたような感じで、ホントに必要最低限だし……。

考えて見たら魔王ギリも、部下達で明確に愛嬌のないドクズっていなかったもんな。ギリだけじゃん、ホントのクズ。なんだその魔王軍……。
2024/07/06(土) 09:48 作品感想 PERMALINK COM(0)