一度ニケの綺麗な心理だけを、自分なりに引っ張り出して整理してまとめてみよう。って思って書き出したのに、
途中でうめぼし大名が介入してしまった。もうダメだ。かなりいい小説書けた感触はあるんだけど、ちょっと今回は違う事がやりたかったんだ。でももうダメだ、うめぼし大名が介入しちゃえば止められない。
実際うめぼし大名セットてどのくらいのお値段で売れるんだろう。あのギャグメチャクチャ笑えるし好きなのもあって、結構高く設定しちゃったんですが。
参考画像用リンク・グルグルギャグ総選挙9位 うめぼし大名うめぼし大名、
アニメだと旗が2本に増えてるのに今気づいてダメだった。(google画像検索)本当に
原作の何もかもが好きで、
もっとこうしたらわかりやすく、押しつけがましくもなく、自分達がウケた感動を理解してもらえる!って気持ちがこもり過ぎて、うめぼし大名すら泣けちゃうアニメだわ。
いや笑うけど。なんで旗増やすんだよ……wwここはもう原作そのままで相当な破壊力あっただろ……wwwwマジで原作をギャグごと大好き過ぎだろ……ww(ゲソックの森とかも、本当は次回予告ネタのみじゃなくて本編でやりたかったんだろうなぁ……)
幼い頃から父に勇者の訓練、旅に出てからは自主的に盗賊の弟子入りと、面倒な事が嫌いな割に修行修行ばかりの生き方をしていたせいか、ニケはいつも朝早くに目が覚めてしまう。本当はあと五分、三十分、一時間、お昼過ぎまで寝ていたい。なんなら夜まで寝ててもいい。
本来自分は、そのくらい面倒くさがりのはずなのだ。
「クク……」
同じ部屋の、別の寝台に眠ているはずの彼女を起こそうとしたら、フワフワの亜麻色の髪の天使がいた。キタの町の宿で同じ天使を見たな。ところでククリが寝ているはずのところに亜麻色の髪の天使が眠っているとなると、ククリはどこに行ってしまったのだろう。心配だ。
「これがククリだよ!」
ニケは己の思考回路に耐えられず、一瞬でうめぼし大名の格好になりながら、一人で叫んでしまった。
「うーん……」
慌ててすっぱい口になっている(なにしろ今はうめぼし大名なので)自分の口を左手で押えた。右手では梅干しのツボを持っているので、漫画でよくある感じの両手で抑えられないのだ。まだ宿を出るには早い時間だし、もうしばらく寝かせておいてあげたい。自分の朝の支度が終わった辺りで、ククリを起こすのにちょうどいい時間になるだろう。
いつもなら服なんて一瞬で着替え終わるのに、思わず一人でうめぼし大名になってしまったので、着替えにもいつもより時間がかかってしまうし。
ギャグ漫画って理不尽だ。ふとした時自分でもいつ着替えたのかわからないような格好になってるのに、元の格好に着替える時は、普通に手間暇かけて着替えないといけない。
まずはこのいかにも割れやすそうな梅干しのツボを床に置いて、それから背中に背負った変な旗を片付けて、鎧も脱がないといけない。この鎧が何気に複雑な構造をしていてまた面倒くさい。
普段鎧なんか装備しないのに、なんでこんなの一瞬で着られたんだオレ。
「それはオレにもわからん」
今度は声のボリュームを下げる配慮をして、一人呟き、鎧を脱ぎ捨てた。
〇
「ククリ、朝だよ」
「ん~~魔法陣ニケくん……」
ベッドの中の亜麻色の髪の天使に声をかける。口の中でもにょもにょとカワイイ唇がなにか言ってから、寝台中に広がった髪よりも深い色合いの目が開く。ククリの好物のチョコレートは、ここを作るため摂取してるのかも。
「あ、ゆうしゃ、様……?」
「おはよ、ククリ」
カッコいいポーズが使えなくなっても、ククリにとってカッコイイ勇者様であるように微笑みかける。
「支度終わったら、出ようぜ。ゆっくりでいいから」
「う、うん……」
ククリはまだ眠りの国にいるのだろうか。どこかぼんやりとして視線が定まらない。ククリは眠りの国でも冒険が出来てしまう子だから。ちょっとだけ心が痛む。オレはククリと現実で冒険がしたい。
洗面所に行ったククリが戻って来て、寝台に腰かけ、髪を梳かし始める。ほどくと天使と間違えるフワフワの髪は、こういう女の子らしい、たゆまぬ努力によって保たれているのだなぁ。と納得する光景だが、どうしても天使の空想と、髪を梳かす現実の女の子の姿が上手く結びつかない。
(どっちもククリなのにな)
「勇者様?」
「えっ、あっ、ゴメン、ジッと見ちゃって!」
ククリに出会ってから、気づかないうちに視線が彼女の方を向くようになってしまった。ククリに何かあったらすぐ対応したいからやめる気はないけど、女の子には見ていてほしくない瞬間というのがあるのだ。パンチラドラゴンにパンチラされた時とか。白かったな。
「ううん、いいの」
「そ、そう……?」
なんだか嬉しそうに天使が微笑む。よくわからないけれど、見てていいらしいから、静かに見ている事にする。
髪を透き終わったククリが、後ろ髪を半分に分けて、ひと房ずつ編んでいく。
ククリが自分の髪を編んでいく時の工程は、グルグルより不思議に感じる時がある。どうしてこんなフワフワが、いつものククリの形になれるのか。長く一緒にいるから、天使がいつも一緒にいるククリに戻る時間を眺めるのは初めてじゃないのだが、何度見ても変な感じだった。
「お待たせ、勇者様!」
「んじゃ、行くか」
ククリがククリに戻ったのを見届けてから、自分も腰かけていた寝台から立ち上がる。
「ゆ、勇者様!」
「ん?」
「その……言うタイミング逃してたんだけど……」
モジモジしながら、ククリはハッキリとしない。トイレかな。トイレなら先に行っておかないと大変だ、男子はともかく女子は。
「勇者様の格好……頭だけうめぼし大名のままなの」
「ゲッ!!!」
頭部に触れたらマジだった。いつものバンダナの感触じゃなくて、うめぼし大名のヅラの感触だ!
こんな頭のまま、
「おはよ、ククリ」カッコいいポーズが使えなくなっても、ククリにとってカッコイイ勇者様であるように微笑みかける。とか心の中込みでほざいてたのかよオレ! というか地の文もツッコミ入れてくれよ、出来るだろそういう手法が!!!
「トッピロキ~!!!!」
もう脳の処理が追いつかなくて、うめぼし大名のヅラを床にたたきつける。思ったよりいい音が出てしまって、ククリがビクッと怯えたのがわかる。
「ご、ゴメン驚かしちゃって!! バカみたいだなオレ!! オレちょっと、このヅラと旗と鎧とツボ売って来るな!」
ドタバタと荷物をまとめ、ニケは武器屋へ走って行った。RPGの武器屋は24時間営業で便利だ。夜は武器屋も寝てる事もある。
うめぼし大名セットは5000Rくらいで売れた。案外高く売れた。こんなに高く買い取ってくれるの? 思わずニケが武器屋の親父に尋ねたところ「ヅラと鎧の質が思ったよりいい。壺の中の梅干しも美味い」と、口を酸っぱくすぼめながら言われた。
「よし、行くか」
「勇者様、バンダナ!」
「いけね!」
ククリからバンダナを受け取って、ニケは一瞬で装備した。慣れた準備だし、ククリより簡単なものだし。女の子に比べたら、やっぱり男って気楽だ。
「今度こそ行くぞ」
「はい、勇者様!!」
騒がしかった宿の一室は、パタンと閉じたトビラの音と共に、再び静かになった。
〇
勇者様がバンダナ付ける瞬間を見るのが、ククリはとっても好き!
つけてない時も王子様みたいだけど、やっぱりバンダナ付けた勇者様が、一番素敵!
ククリが朝起きたら、もう勇者様は支度を済ませてることが多いけれど……。
今日は見れちゃった。ラッキーかも!